2017-3-23(2017-4-2更新)

考えることが他人の行動で決まるというのは本当だろうか?

「あなたが決めていることのほとんどは、人の行動に影響されている」と言われたら、それを信じますか。これを実際に聞いてみると「ほとんどの人がそんなことはない。」と答えるそうです。

心理学者達は「何が自分の行動に影響を与えているのか人はほとんど認識できない」と考えているそうです。

そして他人の行動にあなたが左右されているというのもどうも本当らしいのです。

なぜ、このように考えられているのでしょうか。それを調べてみました。

他人の行動が自分の行動の指針になる

たとえば町を歩いていて一つの場所にたくさんの人が集まっていたとしたら、気にならないでしょうか。

または、ほとんど誰もいなかったカフェにお客が集まり出したとたん、その数が一気に増えるという現象を見たことはないでしょうか。

人がこのように行動してしまうのは、社会的原理に基づいているからなのです。

アメリカの放送作家にコリーン・スショットという女性がいて、いくつもの通信番組の台本を担当しているそうです。

彼女はこれまで当たり前のように使っていた台詞をたった3か所だけ変えて、その購買者数を激増させ20年ぶりに売り上げの記録を更新させました。

どのような方法かといえば、これまでの決まり文句であった「今すぐお電話下さい。オペレーターがすぐに対応させて頂きます。」というセリフを「大変込み合っており、すぐにつながらないときもございます。恐れ入りますがその場合は、再度お電話をください。」というセリフにしたのです。

今ではテレビショッピングでよく見かける方法ですね。

視聴者にしてみれば、電話をしてもつながらない可能性がある訳ですから、余計な時間がかかり電話をすること自体が面倒になるはずです。

ところが視聴者の反応はこれとは大きく異なり、放送作家の思惑通りに電話が殺到しました。

これは電話をかけ直す手間よりも、他の人がそれもたくさんのお客がその商品を購入するために電話をしているイメージを視聴者がもったからだと考えられています。

電話をした人達は「たくさんの人が購入しているのだから、人気のある商品に違いない。」「他の人も買っているのだから買って損をすることはない。」と考えたわけですね。

ということは、この商品の購入者は見も知らずの相手の行動から影響を受けていることにはならないでしょうか。

またアメリカの心理学者、スタンレー・ミルグラムはニューヨークの人通りが多くてにぎやかな通りで雲を見つめるという実験を行いました。(実際の論文

1分の間、助手の一人に空にうかぶ雲の一つを見つめさせて、その場を通った人がどのような反応を示すのか観察したのです。

その場を通った人の40%がその助手が見つめる雲を同じように見つめ、またその中の5%は立ち止まりました。

これに対し、同じく雲を見つめる人の数を15人に増やしたところ、今度は通行人の80%以上がその雲を見つめ、また40%の人はその場に立ち止まりました。

ここからも、周りの行動から人が影響を受けることは明らかで、さらに同じことをしている人が多数になるほどその行動からつよい影響を受けることがわかります。

他のケースも見てみましょう。

心理学者のロバート・B・チャルディ-二も人が他人から受ける影響を証明するためにホテルのタオルを利用して実験を行いました。

まずはホテルの利用者に「環境を保護するためにタオルの再利用をお願いします。」と記載したカードを見せてその反応を見たのです。この実験でもそこそこの反応が見られました。

次に、環境の保護をするためにタオルの再利用をお願いするカードとは別に「ほとんどのお客がタオルを再利用しています。」と記載したカードを作成して、それぞれを顧客に見せてその反応を比較しました。

すると、後者のカードを見た顧客は前者のカードを見た顧客に比べ26%も高い確率でタオルを再利用していたことが明らかになりました。

この結果からも、他人のとる行動はその人の行動を左右しているといえるのではないでしょうか。

どんな人の行動なら自分に影響を及ぼすのか

少なからず他人の行動から人は影響を受けていることは明らかです。ところが、すべての人が同じように影響を受けているとは限りません。

そう、影響を受ける人と受けない人が出てくるわけです。

そこでチャルディ-二は「一体どんなひとの行動に人は惹かれるのか」という実験も行いました。

タオルの再利用をしてもらう実験の続きですが、今度は次のメッセージを書いた3つのカードを用意してそれぞれを各部屋に置きました。

1.環境保護のためにタオルの再利用をお願いするメッセージがあるカード

2.ホテルの宿泊客の大部分がタオルの再利用に協力してくれたメッセージがあるカード

3.その部屋に泊まった宿泊客の大部分がタオルの再利用に協力してくれたメッセージがあるカード

引用:影響力の武器実践編

すると、3番目のカードを置いた部屋の宿泊客が一番タオルの再利用に協力してくれたことがわかりました。

また、宿泊客の反応が最も低かった1番目のカードを置いた部屋と3番目のカードを比べると、33%も高い確率で再利用に協力してくれたことが明らかになったのです。

つまり、他人の行動が自分の行動の指針になるのは、行動する側とそれを受ける側の間に何らかの共通点があるほど髙くなるのです。

社会的証明の危険性

この看板を見ると、ごみを持ち帰らない人が多いことがわかる。

他人の行動からあなたが影響を受けることもあることには納得して頂けたのではないでしょうか。

社会的証明はポスターや広告など広く利用されていることは確かです。

ところが使い方を間違うと大変なことにもなるのです。

たとえば、公園に「ゴミ捨て禁止!ここにゴミを捨てないで下さい。」と記載された看板が立てかけられているのを見たことはないでしょうか。

実はこれ、書き方によっては逆効果になります。

こちらもチャルディ-二の実験です。

アメリカに化石の森国立公園があって、そこから化石木が頻繁に盗まれてしまうそうです。

そこで社会的証明の効果を確かめるのと同時に化石の森国立公園から化石木が盗まれるのを防ぐための対策が取られました。

用意された看板は2つです。

(看板の1)
一つ目の看板に書かれたのは「これまでに公園を訪れた多くの人が化石木を持ち出したため、化石の森の環境が変わってしまいました。」という文章で、公園から木を持ち出そうとしている数人の写真と組みあわせたそうです。

(看板の2)
2つ目の看板には「公園から化石木を持ち出すのはやめて下さい。化石の森の環境を守るためです。」と書き、一人が公園から化石木を取ろうとする写真とその人の手の部分に禁止マークを書いたそうです。

看板を立てて盗難率を調べるとその結果は次の通りになりました。

1つ目の看板が立てられた遊歩道の盗難率 7.92%
2つ目の看板が立てられた遊歩道の盗難率 1.67%
 看板を立てなかった遊歩道の盗難率 2.92%

1の看板を立てた場合は2の看板にくらべて、3倍近くの割合で化石木を盗んだ人が増えていたのです。

1つ目の看板は、たくさんの人が化石木を盗んでいることを伝えています。そうすると、良いことや悪いことにかかわらず同じことをする人の数は増えたのです。

それに対し、盗難する人の数が少ないことを伝えるならば、やはり同じことをする人の数は減りました。

やはり他人の行動が人の行動に影響を与えていると言えます。

「何が自分の行動に影響を与えているのか人はほとんど認識できない」と心理学者たちが考えるのはこういった実験があるからなのです。

また、他人の行動から人が影響を受けているのは、どうも本当のことだと言えそうです。

 

参考書:影響力の武器実践編

自分でうつを治す方法