2017-3-26(2017-4-20更新)

多数で決めることが必ず優れているとは限らないわけ

集団で何かを決めた方がリスクは少ないように考えたことはないでしょうか。ところが実は、そうとも言えないのです。

リスキー・シフト実験をご存知ですか?これは個人で何かを決めるよりも集団で何かを決めるときのほうが、より高いリスクをえらぶ傾向があることを証明した実験です。

何かを決めるならば、一人で決めるよりも多数で決めるほうがより確実な決定になるのではと考えたことはないでしょうか。

一つの実験の結果が発表されるまで、多くの社会心理学者は、合議で決めるほうが個人で決めるよりもリスクが低くなると考えていたそうです。

しかし、1961年、ストーナーは、集団で何かを決定する場合と個人でそれを決める場合では、集団で何かを決定する時のほうがより高いリスクになることを修士論文で発表し、この現象をリスキー・シフトと名づけました。

リスキー・シフトの実験

ストーナ―の研究論文を審査したワラックとコーガンは、研究の信憑性を確かめるために次の実験をおこないました。

ストーナ―と同じように、リスクの高い選択肢と安全性の高い選択肢をいれた12の質問を作成し、集団のほうが本当にリスクの高い選択肢を選ぶのか検証したのです。

質問の一例

  1. 現在、そこそこの給与と待遇で働いている電気技師が転職するかどうかで迷っている。このまま同じ会社で働き続ければ、退職後もある程度の年金は保障されている。その一方、転職をするならば将来の保障はないが、働き方によってはこれまでにない高給を得る可能性もある。
  2. 婚約しているカップルが、意見が合わないのではと婚約の解消を考えだした。結婚カウンセラーのアドバイスは幸せな結婚をすることも不可能なことではないが、そこに保証はないという。そこで結婚したほうがいいのかどうかで迷っている。
  3. 重い心臓病で制約は多いが少なくとも生き続けることができる状況にいる。手術の選択肢があるが、成功すればこれまでの制約はなくなり健康な体になれるものの、失敗すれば命を失う可能性もある。そこで手術を受けるかどうか迷っている。

最初に、「成功率が何%以上になるならリスクのある選択を相手に進めるか」という質問をして、その答えを個人で決めてもらい、それから次に、同じ質問を集団(6名)で決議させその意見を決めてもらいます。

そして最後に、個人でその意見をもう一度考えてもらうという方法です。

その結果は次のとおりになりました。(0%に近いほどハイリスクを選んだことになります。)

個人による決定

男性の場合➡55.8%

女性の場合➡54.7%

集団による決定

男性の場合➡47.9%

女性の場合➡46.8%

個人による再決定

男性の場合➡47.1%

女性の場合➡47.8%

やはり、集団で何かを決定するとより高いリスクを選ぶ傾向になることがわかったのです。

また、集団で決定をした直後にその決定を個人が再決定した場合、はじめの個人決定と比べてリスクの高い選択をすることもわかりました。

人は数人と話し合って物事を決めるならば、個人で決めるときより高いルスクを選ぶのです。

個人と集団の意見を比較するとより優れているのは?

集団で何かを決定するとリスクが高くなることは上の実験からわかりました。

では、集団で決定したことは個人で決定したことよりも優れているのでしょうか。

ことわざにも「3人寄れば文殊の知恵」、「3人にして迷うことなし」などがあります。他の意見を取り入れるとよりよいアイデアが生まれるようにも考えられます。

ところがここには落とし穴があり、話し合いの中で批判や否定があると思考が閉ざされ、その結果よい決定にならないことがあるのです。

またコミュニケーションに集中するためその内容を考えること自体が散漫(思考力の低下)にもなり、これはプロセス・ロスと呼ばれています。

さらに合議になると相手の意見にたよる傾向がみられ、自分の考えやアイディアを熟知しなくなるフリー・ライダー効果が起こりやすくなります。これは人数が増えるほど強くなるそうです。

また心理学者のスタイナーによると難しい問題をグループで考えるなら、その中の一人が正しい回答を出せれば、問題は解決するとしています。

つまり、多数で何かを決定するならば、もっとも有能なひとの意見が全体の意見になり、その他の人の意見は反映されないこともある訳です。

ということは、集団の決定が個人の決定にくらべ、必ずしも優れているとはいえないはずです。

それでも個人の意見より、集団の意見のほうがいいものであると信じる人が多いため、合議での決定が好まれるのではと推測されています。

意見が極端にかたよるのは何故

集団で何かを決定するならば、人はハイリスクの選択をする傾向にあることがわかりました。しかし、いつもこの選択になる訳ではありません。

個人の安全志向が極端に強いと集団での結論も安全性の高い選択になるのです。このように安全性に偏ることはコーシャス・シフトと呼ばれ、リスクが高い方に偏るリスキー・シフトと同じように集団極化になることがあります。

集団極化とは意見が極端に一方方向へ傾くことをいいますが、何故、集団極化が起こるのでしょうか。

これまでいくつかの説が考えられています。

その一つは社会的比較説と言われていて、たくさんの人が自分と同じ意見を持っていると、「あ、私は間違っていない!」「他の人も自分と一緒だ」と自分の意見に強い確信をもつことになり、集団極化が起こるのではという説です。

もう一つは説得的論拠説と言われていて、自分の意見と同じ意見をもっているひとが自分とは全く違う視点からその意見に同調している場合、自分の意見はより正しいものだと確信をもつ傾向があると考えられていて、それが集団極化を引き起こすのではという説です。

また、話し合いをする前でも、大多数の人が支持する意見がそのまま決定になりやすいことから初期主導型決定プロセスから集団極化が起こるのではという説もあります。

つまり、個人が自分の意見につよい確信をもち、その意見を積極的にアピールすることが集団極化を起こすのではと考えられているのです。

自分でうつを治す方法