2017-3-25(2017-4-15更新)

気付いているのに誰も助けなかったのはなぜ?キティ・ジェノヴィーズ刺殺事件

いじめられている人を見ても誰も助けようとしない本当の訳

1964年に起きた暴行殺人事件です。一人の女性が暴漢に襲われました。しかし、たくさんの人達がこの事件を目撃していたのにも関わらず、助けの手を差し伸べる人は誰もいなかったのです。

何故、このような事態になったのでしょうか。

キティ・ジェノヴィーズ事件

キティ・ジェノヴィーズはアメリカ、ニューヨーク州でバーのマネジャーをしていました。明け方近くに仕事が終わり、自宅近くの駐車場に車を止めて家まで歩いていたところ、突然背中をナイフで刺されたのです。

ジェノヴィーズの悲鳴があたり一面に響き渡り、周りの建物には明かりがともりました。

ところがその後も、ジェノヴィーズは同じ男に何度も刺され警察が駆け付けたときには、首をさされたことが致命傷となり、もうすでに死亡していました。

警察に通報したのは悲鳴を聞いた同じアパートに住む男性です。しかし、この男性がこの緊急事態の通報をしたのは事件が起こってから30分以上も経過した後でした。

またその後の警察の調べから、この事件の目撃者は38人以上もいたことが明らかになったのです。

目撃者達はなぜ、この事件をもっと早く警察に通報しなかったのでしょうか。

人は冷淡だから。。

他人のことには関わりたくはないという心理が働いたから。。

心理学者のビブ・ラタネとジョン・ダーリーは「たくさんの人が悲鳴を聞いたからこそ、人は行動を取らなかったのでは」と仮説を立ててそれを検証しました。

仮説の検証

2人が行なった実験は至ってシンプルです。各参加者に個室に入ってもらい、マイクロフォンを使って見えない相手と討論をしてもらいます。

討論する相手の居場所は知らせず、メンバーの人数だけは伝えておきます。

それぞれが発言できる時間は2分間です。その持ち時間が経過するとマイクのスイッチが自動的に切れて発言は出来なくなる設定です。

討論中、参加者の一人に突然の発作が起こり、「苦しい、助けて」とマイクロファンの向こう側から苦痛の声がします。

助けを求める声は何度も聞こえるのですが、与えられている2分間が過ぎてマイクはカチリと途切れます。

さあ、あなたならどうするでしょうか。

すぐに誰かの助けを呼ぶでしょうか?それとも。。。

実験の結果は次の通りでした。また、参加者の1人を除いた全員が実はサクラです。

2人の場合、4分以内に助けを呼んだ確率は100%

3人の場合、4分以内に助けを呼んだ確率は85%

6人の場合、4分以内に助けを呼んだ確率は60%

つまり、助ける人が自分以外にはいないと認識したならば人は迅速な行動をとるのに対し、自分以外の誰かでも助けることができる状況ならば、援助活動をする確率は低くなるのです。

また、助けることができる人数が多数になるほど、援助活動をおこなう確率は下がります。

上の実験でも、6人の場合は報告までに平均2分以上もかかっているのに対し、1対1のケースになると報告までに係った時間は1分以内でした。

その場にいる人が多数になるほど「誰か他の人がするのでは?」「他の人はどうするのだろう?」「わたしの判断は間違っているのでは?もしそうなら、他に知られたら恥ずかしい。。」と考えてしまい必要な行動でも取れなくなるのです。

これを社会心理学では傍観者効果と呼んでいます。

友達が緊急事態なら

またラタネとダーリーは、知っている人に緊急事態が起こっているときでも人は同じような反応をするのだろうか検証しました。

その方法とは、一つの部屋に学生を集め、その部屋の中に視界がかすむほどの煙を送り込みどのような反応を示すかを調べたのです。

学生が一人で部屋にいた場合、その内の55%が2分以内にその場を退出してこの緊急事態を実験者に報告しました。

ところが、2人(内1人はサクラ)で部屋にいた場合、同じ事態が起こっても一方がそれほど気にかけていないとなると、同じく2分以内にこの事態を報告した学生はたったの12%にとどまりました。

ラタネとダーリーは、緊急事態の重大性を誰かと確認できる状況でも、周りが同じような認識を持たなければ行動は抑制されると推測しています。

また、急を要する出来事に直面してから助けを求める行動までのプロセスは次のようになります。

  1. 緊急事態が勃発する➡それを認識する
  2. 助けが必要なのかどうか判断する
  3. 自分が助けなければならないのか判断する
  4. 助ける方法があるかどうか確認する
  5. 助ける!

自分では「危ない!」と認識しても「周りは同じように感じていないのでは!」と思うことを多元的無知といい援助活動の妨げになります。

次に、助けが本当に必要なのかどうか分からない、曖昧な認識の場合も援助活動は抑制されます。

また、3の「他に助ける人がいるのでは!」と考えるときと4の「助ける方法がない」ときも援助活動は抑制されます。

最後の5が妨げられるのは、「もしかして自分の行動に誤りがあったら恥ずかしい、人がおかしいと考えるのでは?」と思うことです。

この推測から、一人でいるときよりも多数でいるときの方が援助活動をする可能性は低くなると考えられているのです。

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